第2回レクチャーを開催しました。

更新が遅れてしまいましたが、去る2/18(金)13:00より、山上会館にて第2回レクチャーを開催しました。
今回のレクチャラーである中島直人先生と大野秀敏先生の略歴紹介、DIEP趣旨説明の後、
さっそくお二人にレクチャーを行っていただきました。

中島先生には「展開志向の環境技術論」と題して、各国の都市計画パタンのお話から日本の敷地における「都市・地域」の意義について、そして都市・地域に対する環境技術とは何かについてお話頂きました。

最初の都市計画は、産業革命以降の都市環境の悪化や都市拡張への対応として生まれました。
イギリスでは19cにモデル建築条例を制定するバイロウハウジングが始まり、その後20cになると条例でアルゴリズム的にできる都市へのアンチテーゼとしてハムステッドの都市計画などがおこりました。

続いてドイツ、アメリカの都市計画。



大方潤一郎氏は、世界の都市計画について
 ドイツ:事前確定的プラン
 アメリカ:ゾーニング型プラン
 イギリス:裁量的許可型プラン
と分類しました。

では日本の場合はどうでしょうか?
日本では、都市の建物が非事前確定的に決まります。
周囲に何が建つかわからない状況でのスタディサステナビリティとは何でしょうか。

新宿区の若葉地区の計画。
壁面後退と奥行き率を設定しました。
しかし共同建替えは合意形成が難しく、逆に個別建替えでは環境改善が難しい。
共同でも個別でもない環境コントロールとは?


越谷レイクタウンのパッシブデザイン建築協定。風を活かした都市計画です。
単体建築物に留まらず都市・地域スケールの環境技術とマネジメントの仕組みを構築すること。
つまりハードな技術+ソフトな技術の組み合わせが必要ですね。

白川村では水路を利用した融雪システムが取りれられています。
先端的な環境技術だけじゃなく、在来技術や伝統技術の維持再生やマネジメントも大事です。

共有地の管理を通じたマネジメント機構を取り入れているゆいまーる越谷。

結局、都市とは実体としては敷地周辺のこと。
街区としていかに環境性能を高めるのか、そこにも挑戦してほしいというお話でした。
そしてそれにはハードだけでなくソフトな技術も大事になってきます。

つづいて、大野先生。
「実践的緑色環境計画」と題して、大野先生が手がけた実作を紹介しつつ実践的な環境技術についてお話しいただきました。


柏キャンパス、環境棟。
S字(サステナブルのS!)型にすることで外皮の表面積が増え、通風や採光に有利になります。

庇とルーバーは日射遮蔽に。
庇があれば梅雨の時期に通風で過ごせる上に外壁も傷まないのですが、
建築家は意匠を重視するので庇が嫌いなんだそうです。

手前が環境棟。環境棟だけ引き違い戸なのがお分かり頂けるでしょうか?
他はflexか縦軸回転か滑り出しで、実際の通風には向きません。
これも意匠重視の弊害。

環境棟は廊下と室内が引き戸で通風できます。
防火区画から計画しないと通風はできません。
計画の段階から配慮が必要なんですね。

区画されたラウンジ。
なんとなく憩いの場を作る学生が結構いますが、きちんと閉まることでレクチャールームや作業場にもなり、利用度が高まります。

このように、先端的な環境技術だけでなく、一つの建築を人が使えるようにする小さな配慮の積み重ねが大事なのです。


次に宇宙連携機構棟。


らせんを描く構成で、中央のホールにはホワイトボードが至る所にあります。
どこでもdiscussionができるよう、ここの研究者たちを考えた構成。

ホールで使っている空調は大野先生自らデザインしました。
人がいる領域のみの空調でエコな上に、小型化させホール空間を邪魔しません。

研究個室は足元で換気します。
こうすることで書類が飛ばないので窓を開けられるようになります。

こちらでもどのような集団が使うのかに配慮した細かい所作が環境建築を機能させています。

最後に、コンパクトシティについてのお話も。

グリーン・ファイバー(モビリティ)では公共交通をコンパクト化の牽引役として使用します。
ネットワークとして使うバスの提案。


オレンジ・ファイバーでは日替わりの公共サービスやお寺のコンバージョン、地域のコミュニティダイニングなど。

コンパクトシティにおいては、コンパクト化の周縁部にできる限界集落(?)への配慮が大切なのです。


大野先生のレクチャー後、休憩を挟んで中島先生×大野先生の対談と質疑応答が行われました。

そこでは

建築学科と都市工学科の都市開発への姿勢の違いについて
 大学と社会というフィールドの違いなのではないか。
 都市工は現実に起きていることをクリティカルに捉える(中島)
 都市工ではルールを作って個々ではできない利益を考えるが、
 建築はそのことに拒否反応を示す(大野)

・DIEPでは都市計画から設定すべきではないか。
 不安定な周辺環境にも対応できるダイナミックなシステムを考える必要も

・環境的アプローチから都市美はできるか、という問いに対して
 都市美はアメニティ(身体的快適さ)や視覚性から得るものであって、
 エネルギー的なものからは感じない(中島)
 機能を追求すると美しさが得られるというのは間違いで、
 環境追求を正当化するためのアリバイのように用いてはいけない(大野)

・最近では個人行動のモニタリングなど、測定精度が上がってきたので、
 工学的データをもとに都市を作ることも志してもよいのではないか

・惰性と習慣はちがう。
 変えられるものと変えられないものがある(その制度の歴史的長さによる?)。
 普通の人の感覚と制度の反故があって、
 大学はそういう点を提示して普通の人々に気づいてもらうのが役割。
 個々の思考の怠慢の積み重ねが惰性。

・物理量と感覚は密接に関わっている。
 感覚を磨いて、ボキャブラリーを増やすべき。
 冬の気温で東京で快適な場所mapを作ってはどうか

などのお話が聞けました。

今回のレクチャーはDIEPの活動の方向性にも大きく関わりそうな色んな示唆がたくさんありました。
次回も楽しみですね。