第1回レクチャーを開催しました。

去る2/14(月)13:00より、山上会館にて第1回レクチャーを開催しました。
今回のレクチャラーである難波和彦先生と井庭崇先生の略歴紹介、DIEP趣旨説明の後、
さっそくお二人にレクチャーを行っていただきました。
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難波先生にはアレグザンダーの活動の展開とご自身の作品である「箱の家シリーズ」との関連についてお話頂きました。

日本におけるアレグザンダーの代表作、盈進学園東野高校。
自然言語を用いた「対話」によって作り出された建築であり、多様なパタンが盛り込まれています。

同じパタンを用いても、デザイナーによって全く違ったプランが出来上がります。ところが...

アレグザンダーと難波先生のプランは驚く程酷似したものに。この結果に直感的に「深入りは危険」と考えた難波先生はアレグザンダーと距離を置く事になりました。

続いて、難波先生の持論である「建築の4層構造」についての説明がありました。
計画論としてのパタンランゲージに技術論・環境論の視点を導入した、ある種の展開形といえる理論ではないでしょうか。

難波先生の作品「箱の家シリーズ」で使用されている6つのパタン。(注1)
アレグザンダー当人は「箱の家はパタンランゲージではない」と否定的な意見を述べたそうですが、プリミティブな建築材料を好むアレグザンダーとの技術の捉え方の違いであると難波先生はおっしゃっていました

2011年現在、これだけの数の箱の家が誕生しています。今後、箱の家シリーズがどのような展開をしていくのかにも注目が集まります。


続く井庭先生にはパタンランゲージの方法論としての可能性・応用について、主に学習パタンを例としてお話いただきました。


井庭研究室で作成した「学び方のパタンランゲージ」。
元々、先生がSFCのカリキュラム委員であったことから発想されたパタンだそうです。SFCのカリキュラムは科目選択の自由度が高く、一見とても良いシステムなのですが実際にはどの科目を選択して良いのか困る学生が少なくないそうです。
そこで、学び方のパタンランゲージを利用することで、科目選択の助けとなるよう計画が進んだとのことです。「ある種の制限がある方が、本当の意味で自由度が高い」
と逆説的に結論づけられる出来事ではないでしょうか。

学習パタン以外にも、これだけの新しいパタンの作成が行われてきています。

1つ1つのパタンは、特定の責任者によってまとめられ、定期的に他者からの評価を受け修正を行う、という作業を繰り返すことでブラッシュアップされたものです。

こうして出来上がったパタンランゲージは1種のコミュニケーションツールとしても捉えることができます。
パタンをきっかけとして問題に気づき、解決を図るということが可能となり、一般には経験則として認識されてきた事柄についての効果が高いように感じました。

学習パタン・ワークショップについてのご案内も頂きました。ご興味のある方は参加されてみては如何でしょうか。


休憩後、両先生の対談では、パタンランゲージを手がかりとしてDIEPの活動について語って頂きました。
具体的には
・環境のパタンは建築単体だけでなく周囲のコンテクストの影響が非常に大きいのでそこに留意するべき。
・できあがった環境パタンから新しい建築の姿を描くことを目標とするべき。
・時間の概念を導入する(長期的な視点で環境負荷軽減を考える、など)と面白いのではないか?
・パタンというある種の拘束があるからこそ、自由な発想ができる。
・パタンは制作者たちの経験から出発するものである。そこを隠蔽する必要は無い。個別から出発し、論理的に突き詰める事で普遍性を獲得するようにするべき。
といった具合に、1時間という限られた時間でしたが非常に密度の濃い内容となりました。

対談を通じて、環境パタンを作る意味が徐々に明確になってきました。
今後もレクチャーを通して、思考の整理を行っていきたいと思います。


注1:出典『パタン・ランゲージ』-環境設計の手引き 鹿島出版会